全人代から中国政策を読みとき為替相場分析に役立てる

全人代から読み解く相場のヒント

さて今月の5日から開催されている全人代、現在も開幕中です。全人代の概要については先週号で言及していますので、リンクを以下に添付いたしますので、こちらをご参照ください。

https://wakatakeinc.com/hk-market-210302/

本日はここまでに発表された政府報告から見えてくる中国の今年の政策について説明していきます。米国市場はもちろん重要ですが、中国の国際社会における影響力は、その急速な経済成長と共に年々高まっています。米国だけ知っておけば良かった時代はとうに終わり、中国を知っておくことで投資やビジネスに差がつくセッションに入っていますので、一緒に学んでいきましょう。

ここでは特に金融市場に影響のある項目についてふれていきます。

まず今年の政府報告でも昨年に引き続き「六穏六保」の方針が示されました。これは「六穏(就業、金融、貿易、外資、投資、マインドの安定)」と「六保(就業、民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業・サプライチェーンの安定の確保)」を政府政策の中心に据えるというものです。例えば先進各国の金融は緩和的ですけれども、中国の政策(金融を含む)は穏やかであると言うことが強く強調されています。人民元はドルや円に比べて随分と安定していますが、背景には、そもそも安定していた方が良い、と言う米国と中国の思想の違いもあるわけです。

それから「大水漫灌」を支持しないと明記しています。これは国の状況を正確に把握し、政府が過度に支援し過ぎないと言うことを強調しています。おそらくはここも先進国との対比として使われています。緩和的な米国と、緩和に慎重な中国、近年のドル安、人民元高を一言で説明出来てしまうくらいに、考え方が違う訳です。

それから昨年に比べて「一帯一路」の言葉が報告に多く含まれています。一帯一路政策は中国から欧州、果てはアフリカまでも陸路と海路で繋ぐ構想ですが、昨年は新型コロナウイルスの影響で頓挫しているはずです。今年は世界的にワクチン開発と流通が進んでいることから、再び一帯一路に力を入れていきたいと言う想いが反映されているのでしょう。こちらは今すぐに相場に影響のある話ではありませんが、中国が中長期的に成長していくための政策です。頭の片隅に入れておけば問題ないです。

さて全人代を通じたマクロ経済政策に直接関係のあるポイントを以下にまとめておきます

今年の成長率目標は6%以上
・今年の物価目標は3%
・都市部の新規雇用1,100万人以上
・6500億トンの食物生産能力の確保
為替レート(USD/CNY)を安定させる
・5年間の失業率目標は5.5%以内
・イノベーションに資源投入の方針
・研究費用は年率+7%で増加の方針
・CP「TPP」への参加を積極的に検討
思慮深く(堅実で)柔軟な金融政策を継続
・3.65兆人民元の債券発行、資金調達、投資予定
・台湾への政策変更なし

昨年の消費低迷の反発が見込まれるとはいえ、強気なGDP目標設定と言えると思います。他にも赤字で記載したところには相場を読むうえでのヒントが含まれていますので覚えておきましょう。

全人代は、この後、10日に閉幕の予定です。例年、閉幕に合わせて、全人代における決定事項を公表しますので、注目しておきたいところです。

 

 急速に進む香港の本土化

さて全人代では香港の選挙制度改革についても注目が集まっています。今回、注目を集めているのが香港基本法の附則1(Annex1)と附則2(Annex2)の変更であり、つまり香港行政長官の任命方法の変更と、香港立法府の選挙システムの変更です。

昨年の6月末に、香港国家安全維持法が施行されて以降、徐々に香港の本土化が進んできていることは広く知られています。そして次々と打ち出される本土化政策に対して、民主派議員が反対し、結果として総辞職に追い込まれ、議会が機能しない状況に陥っているのが現状です。

今回の変更では特に「爱国者治港」と言う言葉を用いて、中国を愛する人が香港を治めるべきと強調しています。報告原文をみると、指導者「鄧小平(故人)」氏の言葉を引き合いに出して爱国者治港の重要性を説明していますが、実際には習近平国家主席の強い想いなのでしょう。

さて、全人代では実際に議論を行うものの、実質的には出来レースともいわれており、香港の選挙制度改革についても、おそらくは10日に草案の認可が行われるはずです。細則についてはいつも通り、全人代終了後に定めていくのでしょう。

たったの1年でこんなにも大きく香港が変わるものかと、驚いてます。中国の政策の良い悪いは別に、このスピード感については各国、見習うべきところがあると思います。

早い速度で変化していく中国に対して、米国は真剣に危機感を感じています。米国も欧州も日本も、中国に対してより厳しい態度を取り始めていますが、それは今止めておかなければ手遅れになると言う危機感の表れでもあるでしょう。

私たちは、本シリーズを通じて、香港、中国について知識をつけ、相場に臨みましょう。それが世界の潮流であり、きっと投資やビジネスにも役立つはずです。

 

香港ドルと人民元相場のアップデート

さて為替相場のアップデートをしていきたいと思います。先週のドル円相場は、ほぼ押し目なく上昇を続け、水曜日に107円、金曜日に108円を突破し、金曜日NY時間の強い米2月雇用統計を受けて108円64銭まで上昇しました。WTI原油先物が1バレル=65ドルを突破する中で、米インフレ期待が高まり、米利上げ及び、テーパリング(金融緩和の縮小)観測が高まり、米10年債の利回りが一時1.60%を突破、日米金利差が意識される中で素直に米ドルが買われている状況です。

このような中で、香港や中国の動きはどうなっているのか、まずは香港ドルから見ていきましょう。

 

香港ドル/日本円(HKD/JPY)はドル円と同様、大きく上昇しており、今にも14円台に突入しそうな勢いです。2月9日号で、14円台突入、14円20銭が目安と言及していますので、一旦の目安は14.20に据え置きたいと思います。ただここからの上昇余地は限られると思いますので、上手く乗れている方は利食いを入れても良い時期だと思います。

https://wakatakeinc.com/hk-market-210209/

それから米ドル/香港ドル(USD/HKD)にも動きがみられます。徐々にレンジを切り上げ、7.76台へと上昇しています。ドル高の流れの中で、こちらもしばらくはドル高・香港ドル安を想定してます。

次に人民元を見ていきます。

 

人民元/日本円(CNH/JPY)は大分上昇し、一時16.70銭まで上昇したものの、ここにきて少し伸び悩んでいます。背景には米ドル/人民元(USD/CNH)のドル高・人民元安があります。まず金利差の視点から見ていきましょう。

 

ここもと人民元金利が低下する中で、米中金利差は縮小しています。そのためドル高・人民元安に値を戻していると見ることができます。また米長期金利が上昇していることから、米ドル金利の先高観も意識されているのでしょう。またバイデン政権の政策により、「人権」と言う共通項で米国が欧州と日本を巻き込み中国を追い詰めています。こういったバイデン政権の外交政策も人民元反転の兆しになっていると感じています。

 

さてここのところ為替市場ではドル円の上昇が目立っています。背景には米長期金利の上昇があると言われており、おそらくこれについて異を唱える人はいないでしょう。

そこで意識したいのが米長期金利は何%まで上昇するのか、またテーパリングは本当に開始されるのかと言うことです。答えとしてはいずれもインフレ圧力次第ですが、原油先物の上昇の勢いが強いので、FEDが早期に利上げや、テーパリングを迫られる可能性は意識しておきたいところです。

こういった局面で最も注目が集まるのが、消費者物価指数やISMなどのセンチメント系の指数です。消費者物価指数で実際のインフレ率を確認し、ISMで潜在的な景気上昇余地(インフレ圧力)を測定していく時間帯に入ってくると思います。

 

<参考文献・ご留意事項>

各種為替データ
https://Investing.com

人民網 全国2021両会:李克强作的政府工作报告(摘登)
http://lianghui.people.com.cn/2021npc/n1/2021/0306/c435267-32044082.html

人民網 全国2021両会:关于《全国人民代表大会关于完善香港特别行政区选举制度的决定(草案)》的说明
http://lianghui.people.com.cn/2021npc/n1/2021/0305/c435267-32043633.html

The Basic Law of the Hong Kong Administrative Region of the People’s Republic of China: The Constitution of the People’s Republic of China
https://www.basiclaw.gov.hk/en/basiclawtext/index.html

 

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戸田 裕大

若竹コンサルティング 創業者